第一声

参政権という、国民にとって最も大切な権利を持ちながら、
政治には本当に興味が薄い人間でした。
子供の頃から、テレビに出ている政治家を見て、
何て脂ぎった、煮ても焼いても食えない面構えだ…とか、
いかにも悪いことやってそう…とか、
やたらと万歳したがる奴らだ…とか、
戦国時代じゃあるまいし、「エイエイオー!」とは何事か…とか、
とにかくイメージが悪かった。

国会中継を見れば、
つまらない質問につまらない答弁。
キツネとタヌキの化かし合い。
汚いヤジの応酬。
ひいては乱闘騒ぎ。
ダイのおとなが何を芝居がかったことやってるんだろうと、
とてもこれが国民のリーダーだとは思えませんでした。

頭のいいやつは官僚になって、
頭は悪いけど腕っ節と度胸のあるやつが政治家になる。
だから、頭の悪い政治家が乱闘を演じている間に、
頭のいい官僚が粛々と国を治めている。
何だか、そんなイメージが身体に焼き付いているようです。

歴代の総理大臣にも、
この人に国の将来を任せてみたいと思える人物には、
残念ながら僕は出会ったことがありませんでした。
そんな中で、野田さんはちょっと違いました。
顔は脂ぎって、決して善人面とはいえませんし、
大衆をグイグイ引っ張ってゆくカリスマでもない。
でも、正直な人、誠実な人だという信頼感は、
これまでの総理大臣にはないものでした。

今日は選挙の公示日。
全員の候補者が、一斉に選挙活動を始める日です。
僕は、阿佐ヶ谷からはるばる船橋まで行って、
野田さんの出陣式を見てきました。
選挙演説に、わざわざ出かけて行くのは生まれて初めてです。

別に民主党を応援しているというわけではない。
彼らのやってきたことは間違いだらけであったとも思います。
でも、
野田さんというリーダーが、今  何を考え、何をしようとしているのか。
歴史の一局面として、とても大切な時だという直感がありました。
残念ながら、集まっていたのは、60過ぎの老人が7割でした。

阿佐ヶ谷の駅に帰ってくると、
駅前では山本太郎というタレントが演説をしていました。
ネクタイに背広という政治家スタイルではなく、
ジーンズにニットセーターというカジュアルな装いで、
「山本に清き一票を!」という古風な台詞ではなく、
自分の考えを蕩々と述べていました。

その内容は、やや思い込みが感じられ、
また一面的過ぎるきらいはありましたが、
でも、所謂選挙のスタイルに飽き飽きしている僕の耳には、
思った以上に新鮮な印象を残しました。

やはり、国民は変化を臨んでいるのでしょう。
何となくこれまで通りに物事が進んでゆくことに、
うんざりし、
かといって「これだ!」というカリスマも見当たらない。

選挙活動の期間は短いけれど、
今回は、その間に色々な風が吹きそうな気配がします。
二転三転。
どちらへ転ぶか、まだまだわかりません。

自分も、良く見守ってやろうと、
そんな風に思っています。
参政権を、今回は少し大事に使ってみようと、
生まれて初めて思っています。

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