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マーラー

マーラーという作曲家は不思議な音楽を作ります。 音楽を聴き始めた子供の頃は、 やはりベートーベンやシュトラウスのような音楽が好きでした。 バッハやブラームスも、知的な音楽だなぁと感じ、 モーツアルトの「疾走する哀しさ」「溢れ出る天才」も凄いと思いました。 でも、マーラーは何かピンとこなかったのです。 曲が長いし、何だか独特の旋律が奇妙で、冗長で。 ある頃から、妙にマーラーがコンサートで演奏されるようになって、 頻繁にマーラーの名前を聞くよにうになると、 一応聞いておかなくてはならないのかという気になり、 一応耳を通しました。 でもやっぱり飽きてしまう。 そんな頃、確かNHKだったと思うのですが、 マーラーのドラマを何回かのシリーズでやりました。 これも随分前のことです。 これがイメージを少し変えました。 「巨人」という作品が有名なものだから、 勝手に巨人のイメージを持っていた人物像が反転。 悩めるひとりの人間としてのマーラー像ができて、 すると、聞こえる音楽も、また違って響くようになりました。 まぁ、人間なんてそんなものでしょう。 それ以来、マーラーは自分にとって、もう少し身近な存在になり、 等身大の人間として、彼の感じるものを思うようになりました。 マーラーの音楽には、よく森の風景が出てきます。 森を散歩していて聞こえる風の音、鳥の声。 木々の間から差し込む木漏れ日。 遠くに聞こえる動物の鳴き声。 枯れ葉の臭い。 そんな、自分も体験できる五感が、 音楽になっています。 私は楽器はできないのですが、 歌が好きなので、 合唱団に入って、何度かマーラーの交響曲を歌いました。 今も交響曲 第2番 「復活」 を練習しています。 このように、少し深くマーラーの音楽と関わるようになると、 またずっと彼の音楽が近くになってきました。 マーラーの音楽には不思議な魅力があります。 とても思いつかないような複雑な和音を、 惜しみなくちりばめた旋律。 壮大でありながら繊細な感性。 様々な要素が織り交ぜられて、 それはそれは、 涙が出るくらい美しい世界が広がっています。 こんなに美しいのに、 何故わからなかったのだろう。 知れば知るほど好きになる。 確かな価値が見えます。 あぁ、世の...

玉三郎

自分の顔が玉三郎に似ていると言われてきました。 当代一の女形に似ているなんて実に光栄なことですが、 「玉三郎さんには申し訳ないなぁ」 などど勝手なことを思っているあたり、 私もかなり軽い人間です。 歌舞伎は、ほんの数回しか見たことがありませんが、 大好きです。 まるでナイターの球場に入った時のような、 幕が切って落とされる瞬間の華やかさ、美しさ。 わくわくする夢の世界に入り込んでしまいます。 そうか、歌舞伎って昔の人にとってディズニーランドみたいなものなんだ。 能や狂言、浄瑠璃や落語、舞踊、そしてお芝居。 歌舞伎には色んな要素が遠慮無く詰め込められていて、 まさにエンターテイメント。 話の内容も様々な時代にわたる。 それぞれの時代の、 ちゃんとした日本語が心地よい。 江戸っ子のいなせな言葉も大好きです。 そして歌舞伎にしかない絶妙の間。 何と呼ぶのか知りませんが、 拍子木のように、バンバンと床を打つ音。 それにぴったりと息の合った演技。 静寂の美しさ。 盛り上がった場面での、 浄瑠璃と三味線の掛け合い、 長唄衆とお囃子の掛け合い。 こりゃあ、ロックやジャズの即興演奏に近いものがあるぞ。 伝統芸能なのに、すごくアヴァンギャルド。 ホント、久しぶりに歌舞伎を見に行く機会がありました。 初春大歌舞伎という、 とても華やかそうなお題であります。 初めて玉三郎を見ることができました。 舞が中心の演目で、 玉三郎の色気は控えめでしたが、 美しいというよりは、貫禄や存在感を感じさせました。 まさに、あっという間の5時間。 歌舞伎のチケットは高いけれど、 東京ドームで大物のコンサートを3回聴くよりも、 ずっと価値があると思えるのです。

歌うこと

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小さいときから歌うことが好きでした。 「きれいな声ですね」 と大人の人から褒められると、 恥ずかしいけれど嬉しかった。 合唱するのも楽しいし、 ひとりでピアノを弾きながら歌うのも好きでした。 バンドで歌っていたこともあります。 人の声にはえもいわれぬ美しさがあります。 人の声にしかない柔らかさとニュアンス、 そしてぬくもりがあります。 美しい声を聴いていると心が洗われるような気持ちになります。 ノラ・ジョーンズ や エラ・フィッツジェラルド、 リンダ・ロンシュタッド や カレン・カーペンター 神様の贈り物としかいえない声は、 本当に時が止まってしまうよう。 自分の声がとても好きだというわけではありません。 でも何となくきれいな声で歌えているなと思える時もあります。 不思議なものですね。 もっと上手に歌えるようになりたいと願います。 音楽は、聴くよりも演奏する方がずっと楽しい。 そう思っています。 演奏する楽しさは格別です。 自分で演奏していても楽しいし、 人に聴いてもらえれば、なお楽しい。 自信はなくて恥ずかしい気持ちもあるのに、 心のどこかで聴いてもらいたいと思っているのですね。 作年、約18年ぶりにマーラーの「千人の交響曲」の合唱を歌いました。 前に歌ったのはサントリーホール。 亡くなった若杉 弘さんの指揮で歌い、 その年に生まれた長女には、響子と名前をつけました。 今回歌ったのは、ジョナサン・ノット指揮の東京交響楽団でした。 なかなか厳しい合唱指導やオーディションを経ての本番は、 それはそれは美しい演奏でした。 一人の声でも美しいのに、 沢山の人が心を合わせて一生懸命歌う美しさは、 その人数分の美しさを紡ぎます。 さらに素晴らしいオーケストラの調べ。 音楽を作り上げる楽しさや厳しさと、 歌い終えた達成感。 やはり、音楽は聴くよりも演奏する方がずっと楽しいと、 改めて、深く思ったのです。 今年はどこかの合唱団に入団しようと決めました。